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2009年 6月 文庫初版
定価 629円+税 471頁
悠木は40歳の北関新聞の従軍記者、5年前に部下を死なせたトラウマを抱えながら、同僚の山好きに誘われて谷川岳の一ノ倉沢をに挑戦することになった。翌日挑戦という前夜、その知らせが突然入ってくる。日航機がレーダーから消える。墜落現場は長野と群馬の間。当然山はあきらめ、その報告を待つ。実際のところ県境を越え、あちら側に落ちてくれればなどと思っている。群馬県内に落ちれば地元新聞社として記事を作らなければならない。墜落現場は群馬県御巣鷹山、悠木は突然、日航機事故のデスクにさせられる。年齢も経験もすでに管理職になっていておかしくなかったのだが、5年前の事故のトラウマから部下を持ちたくなく記者として過ごしてきたのだ。ともかく明日の一面は日航機事故。そんな時一緒に一の倉沢を目指す約束だった安西が意識不明で病院に運ばれたという知らせも。安西の意識は戻らない、社内の紙面つくりは社長はと専務派に分かれていて、まとまらない。ついでに言えば、群馬県は当時福田派と中曽根派の政争も起こっていた。事故現場の悲惨さも描かれているが、それ以上に社内の権力争いがすごい。事故の悲惨さが抑えられているのはのちに結末近くに載せられる投書にその理由があるのかもしれない。命に重さがあるのですか。新聞種になる命、同じ事故でもすぐに忘れられる交通事故での命。また安西にも、市の倉沢にかける思いがあったようだ。”降りるために登る”、17年後安西の息子と登る一の倉沢の場面も含めて、著者の人生観がうかがえる。
一の倉沢を上ったことは無いが早朝に日がさすときの一の倉沢を下から眺めることはあった。御巣鷹山は、国道から延々と林道を走り、その突き当りが慰霊碑の広場だ。途中は砂防工事だろうかダンプカーが走り回っていたが、季節外れだったのだろうか慰霊碑の前の広場には車一台止まっていなかった。ここから山水戸を上ったところに墜落現場がある。靴の準備もなかったので慰霊碑を見て帰って来た。この作品が発表されているころだったろう。
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個人の蔵書なので、すべて一読はしています。すべて自分で読むために購入した本です。
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