ヴェルディ 歌劇 運命の力 テバルディ ステファノ グェルフィ ネーリ バルビエリ ルイーゼ 1956.6.8 サンティーニ フィレンツェ MYTO

テバルディの運命の力です。このレオノーラとトスカは テバルディの十八番 オハコと言えましょう。1950年代の全盛期には どこに行っても 決まって“運命の力”か“トスカ”だったようで、自他共に許す看板の役柄だった事が窺えます。殊に“運命の力”はイタリア各地の大劇場が競う様にして上演を繰り返したテッパンの出し物で、“カラスのノルマ” “シミオナートのカヴァルス” 同様の イタリアオペラ界の“至宝” “名物” だった事が理解されます。“トスカ”が 他にバリトンが一人居れば …更には テバルディ一人が居れば興行が打てる演目であったのとは対照的に、“運命の力”の方は 劇場の力量を示す…誇示するような 採算度外視の超豪華顔合わせが常に行われていた様で、“興行”として考えた場合は そこも興味深いところだと感じます。
1956年のフィレンツェ5月祭の公演です。とても上等な… 条件の整った録音で、全体にRAIの放送録音なみの良好さだと考えます。日付も明確でライブ録音は確実ながら 演奏は周到そのもの。聴衆は静かで各種のノイズも殆どなく…それでもアリアのあとは大喝采で、全員が固唾を呑んで聴き入っている事が分かり ちょっと感動します。53年にも取り上げられたばかりで たぶんアンコール上演なのでしょうが、テバルディ以外は全役総入れ替えで これはこれで劇場の豪腕ぶりが伝わります。
そのテバルディがトップコンディションで見事です。構えの大きな 瓏々とした歌が豊かに流れ出し 目を見張る素晴らしさだと思いました。いつもよりも表情は抑え目で ひたすら歌に集中した仕上がりながら、緊張感も格も充分で 正に全盛期ならではの凄さだと感じます。この頃が 全盛期の中の更に頂点の時期だったのでしょう。のちの名歌手たちも含めて “テバルディのレオノーラはやはり天下無双だ” と改めて感じました。
ステファノのアルヴァーロもノーブルで素敵です。この役 興奮しすぎて喧嘩っ早く “それじゃ纏るものもまとまらないよ”と思わせる人が多いなか、とてもナイーブで結構だと思いました。重い役では初期にあたる頃でしょうか…至ってリリックな歌ですが、唇を上手く使って豊かなニュアンスが伝わります。カレーラスの同役の祖型 先駆けは ここら辺りでは…と感じさせます。他に…グェルフィは殺人鬼になってからが本領発揮、バルビエリはこうした役はあまり上手くはないものの 看板の大きさが何より、ネーリは好適ですが あの重低音はやはり少し“異界感”を漂わせる…などなど。
サンティーニの指揮も セカセカせずに 締めるところは締めて結構だと思いました。“悠然” としてはいても “緩い” “甘い” とは無縁で、これまた“大劇場の芸” なのだろうと感じました。テバルディやステファノの大きな歌は この指揮あっての成果だった事が理解されます。
当時の慣例通り 三幕の２ツ目の二重唱は全カット。お兄様はアリアを歌ってお終いでした。終幕にも同種の二重唱があるので、或いはこれもリーズナブルな処置なのかも…。
CD３枚目の後半に ボーナストラックとして 53年公演のレオノーラのアリア3曲が併録されています。同じテバルディでも こちらは覇気も衒気も満々で 対比が鮮明です。同一のディスクですし 手軽に聴き比べの面白さが満喫できます。
あんなに流通のあったMYTO盤とかGALA盤とかが このところ品切れ気味の様子です。時代が換わったのか ちょっと分かりませんが、海賊盤は在庫管理が不透明で “あとで”の予測が立ちません。この品も 現在は品切れらしいです。

極美品です。プラケースの表面に少コスレあり。私はその様な扱いをいたしませんので、生来のものだと考えます。その他 本体 ブックレットなどは極美品だと思います。

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